Science Crosspoint Award

Science Crosspoint Award

概要

Science Crosspoint Awardは、東京科学大学基金を活用し、博士課程学生を含む若手研究者による分野を横断した研究を支援することで、学内のボトムアップ型共同研究の促進を目的としています。

学内の研究者が持つ研究アイディア・スキル・知見を組み合わせる異分野融合研究のうち、将来の発展が期待できる優れた着想を持ち、テーマが具体的に決まっている研究に対し研究費の支援を行うものです。

※本賞は、2022年度まで実施していた「異分野融合研究支援」の支援内容見直しに伴い、名称を変更しました。

2025年度の募集要項

募集についてはこちら
※2025年度の募集は終了しました。

過去の採択者一覧(~2022年度 異分野融合研究支援)

2025年度の受賞者

Science Crosspoint Award 第1回目の今回は6チームが採択されました。

所属 職名 氏名 研究課題名
物質理工学院
材料系
助教 水野 隼斗 冠動脈狭窄症の革新的治療を指向したmRNA医薬担時型光応答性バルーンカテーテルの開発
総合研究院
難治疾患研究所
助教 乗松 純平
総合研究院
フロンティア材料研究所
助教 野平 直希 超弾性と抗菌性を兼備するZr基生体材料の「バルク/表面」機能統合設計
総合研究院
生体材料工学研究所
助教 島袋 将弥
医歯学総合研究科
統合臨床感染症学分野
講師 田頭 保彰 感染症診療および抗菌薬適正使用支援のための医療大規模言語モデル(LLM)の臨床実装に向けた基礎研究
情報理工学院
情報工学系
博士課程1年 石田 茂樹
医歯学総合研究科
整形外傷外科治療開発学講座
寄附講座講師 江川 聡 新規リン酸カルシウム化合物の骨形成機序における破骨細胞の役割の解明
物質理工学院応用化学系 助教 齊藤 彰吾
医歯学総合研究科
病態生化学分野
助教 高橋 和樹 精密合成高分子をプラットフォームとしたがん増悪化因子TGF-βを標的としたナノメディシンの開発
総合研究院
化学生命科学研究所
助教 本田 雄士
医歯学総合研究科
歯髄生物学分野
医員 平野 恵子 MHz帯高周波超音波を活用した歯科領域の微細構造欠陥の非破壊診断技術の確立
総合研究院
未来産業技術研究所
助教 和田 有司

受賞チームの研究概要

研究課題名:冠動脈狭窄症の革新的治療を指向したmRNA医薬担時型光応答性バルーンカテーテルの開発
研究代表者:水野 隼斗
共同研究代表者:乗松 純平

本研究は、プラーク蓄積により血管が狭まる冠動脈狭窄症に対し、核酸医薬(mRNA)を効率的に局所送達する革新的な治療法の確立を目的としています。具体的には、研究代表者が持つ「光照射で薬剤を放出するバルーンカテーテル技術」と、共同研究代表者が持つ「核酸を安定的に運ぶ脂質ナノ粒子(LNP)の調製技術」を融合させます。LNPの「硬さ」を精密に制御することで、血流による摩擦(剪断応力)に耐えつつ、狙った部位で光により確実に放出される仕組みを構築します。これにより、従来の低分子医薬では困難だった高度な遺伝子治療を冠動脈で実現し、将来的には脳や腎臓などの他部位の血管治療へも応用可能な汎用プラットフォームを目指します。

研究課題名:超弾性と抗菌性を兼備するZr基生体材料の「バルク/表面」機能統合設計
研究代表者:野平 直希
共同研究代表者:島袋 将弥

本研究では、抗菌性と超弾性を両立する生体用形状記憶合金の創製を目的とします。これまで、形状記憶特性などの力学機能は主にバルク特性として、抗菌性は表面機能として独立に議論されてきました。本研究では、研究代表者が蓄積してきたバルク特性制御の知見と、共同代表者が見出したCuの表面偏析による抗菌性発現機構を融合し、単一の合金系内でバルクおよび表面機能を設計することにより、両機能を統合的に制御する手法の確立を目指します。形状記憶特性を調整するための析出反応と、抗菌特性を付与するための表面偏析を併用することで、生体医療デバイス用途に適した新たな材料設計指針の構築が期待されます。

研究課題名:感染症診療および抗菌薬適正使用支援のための医療大規模言語モデル(LLM)の臨床実装に向けた基礎研究
研究代表者:田頭 保彰
共同研究代表者:石田 茂樹

本研究は、医療用の生成AIを活用し、感染症治療と抗菌薬(抗生物質)の適正な使用を支援する仕組みの構築を目指しています。現在、薬が効かない「薬剤耐性菌」の拡大が世界的な脅威となっていますが、専門医の不足や現場の負担増が大きな課題です。そこで、病院内の安全な通信環境にAIを導入し、カルテにある情報から診断の論点を整理し、最適な薬のプランを提案するシステムを開発・検証します。AIが情報収集や判断を補助することで、医師間の専門性の差を埋め、より安心して質の高い治療を行えるようになります。将来的には専門医の知見を学習した「感染症医AI」を実現し、地域を問わず誰もが最善の医療を受けられる社会を目指します。

研究課題名:新規リン酸カルシウム化合物の骨形成機序における破骨細胞の役割の解明
研究代表者:江川 聡
共同研究代表者:齊藤 彰吾

整形外科では骨折や脊椎固定術など多くの治療で骨癒合を要しますが、現在も自然治癒に依存しているためしばしば偽関節により再手術など大きな負担が強いられます。江川研究室は新規無機化合物が局所投与で著明な骨形成を示し、マクロファージ/破骨細胞による代謝を起点に骨形成因子分泌を介して骨を形成することを見出しました。本研究では臨床応用に向けてその詳細な機序の解明を目的として、化合物合成・骨形成実証を担う江川研究室と、破骨細胞機能・細胞外小胞解析に強みをもつ齊藤(大河内)研究室が連携し、①単球系細胞を用いた分泌タンパク/小胞の解析、②化合物代謝の最適化による骨形成効率化を行います。

研究課題名:精密合成高分子をプラットフォームとしたがん増悪化因子TGF-βを標的としたナノメディシンの開発
研究代表者:高橋 和樹
共同研究代表者:本田 雄士

日本において、がんは国民の2人に1人は罹患し、死因の第1位でもあります。そのなかでも顎口腔領域に発生する口腔がんは希少がんに分類されますが、口腔がんに対して有効な治療薬はないため、外科的治療が主流となっており、術後の咀嚼、嚥下などの患者さんのQOLの低下が生じてしまうことから有効な治療薬の開発が急務となります。腫瘍はがん細胞だけでなく、血管、線維芽細胞など様々な細胞によって構成されるがん微小環境を構築している。がん微小環境において、がん細胞をはじめとした様々な細胞が分泌するtransforming growth factor-β (TGF-β)を介してネットワークを形成してがんの増悪化に寄与しています。私たちはがん微小環境を時空間的に制御するTGF-βを抑制する新規阻害剤の開発に成功しましたが、腫瘍への送達性への課題があります。
そこで本研究では、開発した新規TGF-β阻害剤を精密高分子複合体に搭載することにより、腫瘍への特異的な送達と副作用の軽減ならびに、TGF-βを介したがん微小環境ネットワークの遮断によるがんの根治を目指しています。

研究課題名:MHz帯高周波超音波を活用した歯科領域の微細構造欠陥の非破壊診断技術の確立
研究代表者:平野 恵子
共同研究代表者:和田 有司

亀裂や歯根破折といった歯の内部に生じる微細欠陥は、歯の保存に関わる重要な疾患です。また、根管治療時に使用する金属器具の疲労による歯内部での破断は、治療の安全性に直接影響を及ぼす重大な問題です。従来の診断技術では、歯や金属内部に生じた初期段階の構造欠陥を、非破壊的かつ高感度に検出・評価することは困難でした。本研究では、材料工学分野で確立されたMHz帯高周波超音波イメージング技術を歯科医療に応用し、内部の微細構造欠陥を高感度に捉える新しい診断技術の確立を目指します。異分野の知見を融合した医歯工連携研究として、診断精度の向上と治療安全性の確保に資する新たな研究基盤の形成が期待されます。

授賞式

授賞式は2026年3月2日に大岡山キャンパスで開催されました。