挑戦的研究賞
挑戦的研究賞
英語名称 : Tokyo Tech Challenging Research Award
概要
挑戦的研究賞は、本学の若手教員の挑戦的研究の奨励を目的として、世界最先端の研究推進、未踏の分野の開拓、萌芽的研究の革新的展開又は解決が困難とされている重要課題の追求等に果敢に挑戦している独創性豊かな新進気鋭の研究者を表彰するとともに、研究費の支援を行うものです。本賞を受賞した研究者からは、数多くの文部科学大臣表彰受賞者が生まれています。
東京科学大学は、挑戦的研究賞の選考を通して、本学の若手教員の研究動向を把握するとともに、必要な支援策について検討を行っています。
令和6年度の推薦について
※本賞は公募制ではありません。
※令和6年度の推薦受付は終了しました。
令和6年度の受賞者
第23回目の今回は11名の受賞が決定しました。うち3名は末松特別賞*にも選ばれました。
*挑戦的研究賞受賞者のうち特別に優れていると評価された研究者に対する、末松基金による顕彰。
受賞者 | 所属等 | 職名 | 研究課題名 (★は末松特別賞) |
---|---|---|---|
森竹 勇斗 | 理学院 物理学系 |
助教 | ★例外点プラズモニックセンサの実現と量子生物学への適用 |
山本 和樹 | 理学院 物理学系 |
助教 | 観測誘起相転移の冷却原子系での実現に向けた理論構築 |
中条 俊大 | 工学院 機械系 |
助教 | ★超小型ソーラーセイルの姿勢・軌道統合制御と多様なミッション設計および宇宙実証に向けた実践研究 |
春本 高志 | 物質理工学院 材料系 |
准教授 | 電気・磁気・歪の相関関係による水素検出 |
織田 耕彦 | 物質理工学院 応用化学系 |
助教 | CO2ダイナミクスに基づいた音響応答リポソームの設計と薬物徐放技術への展開 |
永嶌 鮎美 | 生命理工学院 生命理工学系 |
助教 | 比較進化生理学的解析によるアクアグリセロポリン基質選択メカニズムの解明 |
丸山 泰蔵 | 環境・社会理工学院 土木・環境工学系 |
准教授 | コンクリート中の波動伝搬モデルの開発 |
西田 梢 | 環境・社会理工学院 融合理工学系 |
准教授 | クランプトアイソトープ分析技術が拓く海洋生物の生息環境履歴の解読 |
谷中 冴子 | 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 |
准教授 | 抗体分子の潜在的機能部位の網羅探査 |
山本 隆文 | 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 |
准教授 | ★欠陥秩序に基づく物質設計 |
竹原 陵介 | 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 |
助教 | 分子ダイナミクスを起源とする非従来型熱輸送の探索 |
末松特別賞受賞者のコメント
<中条 俊大 助教>
工学院 機械系
このたびは、栄誉ある東工大挑戦的研究賞および末松特別賞をいただき大変光栄に存じます。研究を支えていただいた、共同研究者の先生方、学生、スタッフの皆様、家族には、この場を借りて心より感謝申し上げます。
ソーラーセイルとは、太陽輻射圧を利用する推進剤フリーな推進システムであり、軽量な超小型宇宙機とは特に相性が良く、超小型宇宙機による高頻度な宇宙探査ミッションに有用な重要技術の一つと考えています。ソーラーセイルを利用するためには、軌道力学の理解に基づいたミッション設計(軌道設計)、設計した軌道に沿わせるための制御が必要になりますが、ソーラーセイルの軌道制御は姿勢制御を介して行うため、姿勢と軌道を統合的に制御する考え方が必要になります。本研究では、セイル展開部に備えるジンバル機構を利用した姿勢・軌道統合制御則の確立、および月やラグランジュ点近傍におけるミッションを想定した様々な軌道設計を行いました。さらに宇宙での技術実証ミッションの準備を進めており、将来的には深宇宙探査での応用を目指します。
<山本 隆文 准教授>
科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所
このたびは、栄誉ある東工大挑戦的研究賞および末松特別賞をいただき大変光栄に思います。これまでご指導いただきました先生方、共同研究でお世話になった先生方、また研究に携わってくれた学生など多くの方々に厚く御礼申し上げます。
私は、無機化合物の新規物質合成を行っています。本研究では、結晶中に生成する欠陥を、合成方法や組成の制御によって配列させ、様々な結晶構造を作り出すことを目指しています。欠陥というと、一般的にはネガティブなイメージがあるかと思いますし、実際に多くの場合、物質の性能を低下させる様々な要因になります。しかし、欠陥を周期的に並べることができれば、美しく配列した結晶構造の一部となり、物質の性質を制御する手段となります。最近では、酸化物でよく知られていた欠陥の制御のコンセプトを、ペロブスカイト太陽電池で注目されている有機-無機ハイブリッド化合物にも展開できることを明らかにしました。今後も、様々な物質群において、自在に元素や欠陥を配列させることができる手法を開拓し、これまでになかった機能性材料を開発していきたいと考えています。
授賞式
授賞式は2024年9月13日に開催する予定です。
<森竹 勇斗 助教>
理学院 物理学系
このたびは、栄誉ある東工大挑戦的研究賞および末松特別賞をいただき、大変光栄に思います。光科学分野において世界的に大きな貢献をなされた末松先生の名を冠した賞をいただき、光科学を専門とする研究者として大変感激しております。所属研究室の納富雅也教授(理学院物理学系)をはじめ、これまでの研究活動を通じて出会い、お世話になった方々にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
ナノフォトニクスは、光の波長と同じ数百ナノメートルスケールの構造をつくりこむことで、光の波動性が顕著に表れる舞台を生み出し、光の極限的な性質を引き出すことで光と物質の相互作用を制御する研究分野です。特に近年では、物性物理や量子物理で発展してきたアイデアを援用することによって、これまでの常識を打ち破る様々な光制御が報告されています。本研究では、非エルミート系(開放系)の物理学のアイデアを援用することで高感度な光センシングの実現を目指します。そしてこの高感度性を活かすことで、信号が小さいために測定が難しい量子生物学的な信号の検出にチャレンジします。物理学、工学、生物学の横断的な研究を通して、新しい学理の構築や光技術の開発が期待されます。