「Science Tokyoの星」特別賞【STAR】
「Science Tokyoの星」特別賞【STAR】
英語名称 : Special Award for Science Tokyo Advanced Researchers【STAR】
概要
「Science Tokyoの星」特別賞【STAR】とは、東京科学大学基金を活用し、将来、国家プロジェクトのテーマとなりうる研究を推進している若手研究者や、基礎的・基盤的領域で顕著な業績をあげている若手研究者へ大型研究費の支援を行うもので、次世代を担う、本学の輝く「星」を支援するものです。
本支援は平成25年度に開始しました。
【支援対象者】
公募によらず、様々な業績を勘案し、理事長及びリサーチディベロップメント機構長の協議により選考する。
<観点>
- 将来、国家プロジェクトのテーマとなりうる研究を推進している若手研究者
- 基礎的・基盤的領域で顕著な業績をあげている若手研究者
<役職等>
- 若手研究者は准教授以下(原則40歳以下)とする
募集について
本支援は理事長およびリサーチディベロップメント機構長の協議により選考されるため、公募制ではありません。
毎年度1月頃にリサーチディベロップメント機構長から支援採択者へ連絡を行います。
2024年度受賞者
受賞者の研究概要

<片瀬 貴義 准教授>
【高効率熱電変換と熱制御に向けた新材料設計と開発】
これまでに人類は、かつてないレベルで固体中の電子、スピン、フォトンなどを制御できるようになり、数多くの革新的な電子機器を生み出してきました。一方、エネルギー問題が深刻化する現代において、電子機器や工場などから発生する莫大な廃熱を削減・有効活用することが重要な課題となっています。しかし、固体における熱の伝導は未解明な部分が多く、熱エネルギーの高度な制御や利用に繋がる材料や技術の開発は依然として困難な状況です。私たちは、最先端の計算科学と実験を通じて、熱を運ぶ電子とフォノン(原子の振動)を巧みに操る材料設計を構築し、大規模な熱電発電を可能にする環境調和型熱電材料、冷熱を利用して発電する金属・絶縁体接合材料、断熱と放熱を自在に切り替える熱制御材料などの新材料を実現してきました。今後は、電子とフォノンを操る材料設計を更に発展させ、これまで難しかった熱エネルギーの高度な利用を可能にする次世代エネルギー材料とデバイスの開発に繋げたいと考えています。
受賞者からのコメント
<大上 雅史 准教授>
このたびは「Science Tokyoの星」特別賞【STAR】に採択頂き、大変光栄に存じます。東京科学大学基金から研究費を使わせて頂くことの重みを感じております。寄附者の皆様の思いを形に変えるべく、これからも挑戦し続けていきたいと思います。東京科学大学基金の寄附者の皆さま、選考委員の皆さま、これまでご指導くださった先生方、共同研究者の皆さま、そして一緒に研究を進めている研究室メンバーに、この場をお借りして心より感謝申し上げます。
<片瀬 貴義 准教授>
「Science Tokyoの星」特別賞に採択していただき、大変光栄に存じます。東京科学大学基金の寄附者の皆様並びに選考委員の皆様に心より御礼申し上げます。これまでご指導くださった先生方、共同研究者の皆様、共に研究を進めている研究室メンバーにも、この場を借りて心より感謝申し上げます。このご支援を活かして、今後の研究に一層邁進してまいります。
授賞式の様子




<大上 雅史 准教授>
【モダリティを横断する創薬インフォマティクスの開拓】
最近、ニュースで「薬価」という言葉をよく耳にします。これは、医療費が高騰しているという話題とともに出てくることが多いですが、実は新しい薬を開発するには、10年以上の時間と数千億円もの研究開発費が必要なのです。また、従来にない治療法を考案するためには、さまざまな可能性を組み合わせて検討することが求められます。つまり、創薬は高度化し、ますます難しく、コストもかかるプロセスとなっています。一方で、AIなどの計算技術は急速に進歩しています。これらの技術をどのように創薬に応用して、新しい薬の開発に役立てるかが現在の大きな課題です。私の研究は、コンピューターを用いて新しい分子の設計方法を提案する技術の開発に取り組むものです。特に、近年は低分子化合物、ペプチド、核酸、抗体など、扱う分子の種類=モダリティが多様化しているため、それぞれの性質に合わせた技術の開発が必要となっています。具体例として、低分子化合物向けの自由エネルギー摂動法計算技術(FastLomap、PairMap)、化合物のAI予測においてその根拠を示す技術(MMGX)、さらにAlphaFoldやタンパク質言語モデルを応用した抗体医薬の設計技術などが挙げられます。これらの技術を用いながらさまざまなモダリティに対して、どの手法が最適かを模索し、実際に使える技術の実現を目指して日々研究を続けています。また、モダリティごとに特徴は異なりますが、できるだけ個別に分断せず、包括的かつ横断的なアプローチで取り組むことが、今後の創薬の発展に重要だと考えています。